年度末にかけて怒涛の仕事ラッシュで自転車界隈がどうなっているのか、とんと疎くなっておりました。と思ったら、論争が再燃しているものがありました。ロードバイクのディスクブレーキ、君はホントウに危険なのか、安全に使えるものなのか、どっちなのねん??
ロードバイクのディスクブレーキ問題
2015年8月から試験的に運用が始まったロードバイクのディスクブレーキ。しかし度重なる事故で、都度使用が中断されています。
2016年4月のパリ~ルーベでの事故
ディスクブレーキの使用が物議をかもしたのは、2016年4月に行われたパリ~ルーベでの事故。モビスターの選手が落車した際、前走者のディスクブレーキに足をズタズタに切り裂かれたことがきっかけでありました。この事故を受け、UCIは直ちにディスクブレーキの使用停止を発表したのであります。
4月10日にフランスで開催された「パリ~ルーベ」で、モビスター チームのフランシスコホセ・ベントソ(スペイン)が、落車した他選手のバイクに搭載されたディスクブレーキのローター部分に接触し、脚に深い傷を負った。このアクシデントを受け、国際プロ自転車競技チーム協会(AIGCP)がテスト中止を要求し、UCIが受け入れた。
出典:UCIがロードレースのディスクブレーキ導入テストを一時中止 再開時期は未定
再解禁後、またしてもディスクブレーキ(?)で怪我をする事故
パリ~ルーベで使用停止になったディスクブレーキですが、2016年10月のプレスリリースで「2017年1月1日からのロードレースにおけるディスクブレーキの試用再開」発表されました。ディスクブレーキ再解禁という訳であります。
んで解禁されたばかりのアブダビ・ツアー(2月23日~26日)のオープニングステージでまたしても惨劇が・・・。ラスト1kmでマルセル・キッテルと絡んだチームSKYのOwain Doull(オウェイン・ドゥル)選手の靴が、キッテルが使用していたVengeのディスクブレーキで切り裂かれたとか(゚Д゚;)
Team Sky’s Owain Doull says a disc brake rotor “cut straight through” his shoe “like a knife” following a crash with 1 kilometre remaining of today’s opening stage of he Abu Dhabi Tour. But helicopter footage of the incident is inconclusive over whether there was contact between him and Marcel Kittel, the rider whose bike he believes was responsible.
〔抄訳〕チームスカイのオウェイン・ドゥルによると、アブダビ・ツアー、オープニングステージのラスト1kmのところで起こったクラッシュで、ディスクブレーキのローターが彼の靴を「ナイフのように切り裂いた」とのこと。ヘリからの映像では、オウェインとマルセル・キッテルに接触があったかどうか見極めることは不可能。オウェインはキッテルのバイクによって怪我をしたと主張。
ディスクブレーキが本当に原因か?
モビスターの選手の事故も、スカイの選手の事故も、「まぁディスクブレーキって怖い!」と思わせるに十分なインパクトのあるニュースです。しかし、これはよくよく検証しなければなりますまい(-_-;)
オウェイン選手の怪我はガードレールによるもの??
Could it be possible that cut on Doull's shoe was caused by rusty barrier leg? Seems to be rust-coloured mark either side of shoe cut 1/2 pic.twitter.com/Os7x54YSHy
— Nigel Wynn (@NigelWynn) 2017年2月23日
ツイッターによると、オウェイン選手の靴が切り裂かれたのはディスクブレーキでないかもしれないという報告が上がっています。錆びたガードレールが突出していて、それによって靴が切り裂かれたのではないかと・・・。靴についた擦れた痕がガードレールの錆びの色と酷似しているように見えるとか・・・
業界団体は猛反発
さらにさらに、自転車の業界団体である世界スポーツ用品工業連盟(The World Federation of the Sporting Goods Industry:WFSGI)はオウェイン選手の主張を真っ向から否定。検証の初めから、ディスクブレーキによって怪我が起きた可能性を除外しています。
“The investigation into the accident of Owain Doull is still ongoing and the available material is being studied carefully,” said the WFSGI in its statement.
“After the first material and image investigations, we can say that a disc brake accident can, most likely, be excluded.”
〔抄訳〕「オウェイン・ドゥル選手の事故に関する調査は現在進められており、集められた証拠を丹念に分析しているところだ」とWFSGIは声明で発表。
「証拠品および画像の初期調査の結果、ディスクブレーキによる事故の可能性は排除できる可能性が高い」。
出典:Manufacturers hit back in pro peloton disc brake row
ロードバイクのディスクブレーキは危険なのか、役立つものなのか?
ハイ、という訳で、オウェイン選手の主張は正しい(ディスクブレーキによる怪我)のか、それとも業界団体であるWFSGIの見解が正しいのか、結果が待たれるところであります。しかししかし、ディスクブレーキでホントに切れるものなのでしょうか??
ディスクブレーキで切れるか検証!
ディスクブレーキは本当に鋭利な刃物になり得るのか? そんな疑問に正面から挑戦した動画がありました。それによると、バナナ、ニンジン、キュウリ、ソーセージ、豚肉、ビンディングシューズを実際にディスクブレーキで切り刻もうとしております。
その結果、バナナ、ニンジン、キュウリは問題なくスライスされ、ソーセージ(チョリソー)も切れて、豚肉は切れませんでした。ビンディングシューズはちょっと削れはしたものの、切れませんでした。という訳で、野菜を切るのにディスクブレーキは十分だけど、それ以上にカタいものは歯が立たないそう。
握力が弱い人には有効だけど・・・
上記の動画で安全性は保証されませんが、ディスクブレーキの論争はまだまだ続きそう。でも、ディスクブレーキの効きはやっぱりピカイチなのは事実。雨の日とか、握力が弱い人が長い下りやテクニカルで急な下りを走るときにはとても有効だと思うのです。特に、ふじあざみラインや風張林道、浜石岳のような激坂は上るのも大変なら下るのも地獄ですからな。こういうときにはシッカリ効くブレーキがとても大事でございますですよ。
という訳で、どうなるロードバイクのディスクブレーキのお話でありました。業界団体の意見は、いろいろ差し引いて眺める必要があるでしょうが、それでも論争は続きそう(;´Д`) 少なくとも、ワタクシどものような一般人は、ディスクブレーキじゃなかったとしても、ブレーキだけはアルテグラ以上にグレードアップしておきたいかもしれません・・・。
コメント
DHCさん、ありがとうございます!
ディスクに限らず機材によって怪我した事例はいっぱいありそうですよね~
※ツイッターでチラ見しただけですが、先日の行田クリテの事故も「タイヤ」のバーストによる落車が発端だったとか何とか(真偽不明です)。
ただ、ほかの機材によるアクシデントと違って、ディスクがこれだけやり玉にあがるのは不思議なものですね(;´Д`)
少なくともプロ選手にはディスクブレーキを危険と捉えている人が少なからずいて、その声をセンセーショナルに拾うメディア(やブログ)が多いのかなぁと。
クリンチャーのバーストだって、カーブや下りで起きたら即死事案な危険なものなのに、「クリンチャーは危険だから禁止!」とかならないですよね。
ディスクが新しい故の新参者の辛さなのか、業界団体への反発なのか、それとも本当にディスクだけが突出して危険なのか・・・。
選手の声がある以上、UCIは対応しないといけないでしょうし、業界もそれに合わせて検証して安全性を高めてくるでしょうから、もちょっとしたらディスクはもっと市民権を得てくるかもしれませんね^^
僕としては、一般の(非力な)人でも使いやすくて整備性が良くて輪行しやすくて、効き具合がさらに良くなれば、どんなブレーキでもオッケーでーす(*´ω`*)
普通のサイドプル型のホイールに指突っ込んでスポークで皮膚切れたとかの事故はないのですか?なかなか触れられないので疑問に思いました。