
ロードバイクのトレーニングで大注目&大人気の「ゾーン2トレーニング」。「FTPをもとにしたゾーン2」ではありませんぜ、念のため(; ・`д・´) 折しもツールドフランスで激闘を繰り広げているポガチャルが取り入れていることでも知られる「ゾーン2トレーニング」を広めたのが他でもないチームUAEエミレーツのイニーゴ・サンミラン博士です。
でも実はイニーゴ・サンミラン博士、専門はスポーツトレーニングじゃないの。なんとびっくり、サンミラン博士の研究分野(の1つ)は「がんの研究」なんだって(◎_◎;) へっ!? なんでどうして、ポガチャルと、ローディーと、ゾーン2トレーニングと、がん研究に一体何の関係が!? 本日は、そんな摩訶不思議なサンミラン博士の関わりについて、GCN動画からご紹介。いやぁ、これが非常に非常に面白くて勉強になりました。
This Scientist Believes Pro Cyclists Could Hold The Key To Curing Cancer
本日ご紹介する動画はこちら。「This Scientist Believes Pro Cyclists Could Hold The Key To Curing Cancer」というタイトルであります。
プロサイクリストががんの治療の鍵を握る!? とこの科学者は信じているようです(´_ゝ`)
「This Scientist Believes Pro Cyclists Could Hold The Key To Curing Cancer」のタイトルをザックリ日本語にしますと、「この人、ロードバイクのプロががんの治療の鍵を握っていると思ってるんですって(* ´艸`)クスクス」 という感じでしょうか!?
絵文字は僕の付け足し、揶揄したような言い回しも僕の付け足しです。
動画の内容をざっくりと
動画でどんなことを話しているかと申しますと、GCNが分かりやすく目次を立ててくれていますので、以下に適当に翻訳・意訳して箇条書き。
目次だけを見ると、ロードバイク、ましてや「ゾーン2トレーニング」とは全く関係がないように見えます。ところがどっこい、めっちゃあるのよ。キーワードは「乳酸」です。
- ロードバイクのコーチとがんの研究ってどんな関係があるの?
- がん研究のパイオニア がんの代謝って何ぞや?
- トップアスリートが教えてくれること
- がん細胞と乳酸の関係
- がんの代謝研究はどれくらい進んでる?
- ゆくゆくはがんを治療できる?
がんの研究者なのに、何故プロサイクリストのコーチ!?
サンミラン博士がどんなことを話しているか、詳細はぜひぜひ動画をご覧いただくとして、この記事では、皆さんとワタクシが気になるところをざっくりと、本当にざっくりとかいつまんで要約してまいりたいと思います。医学用語が結構出てきたり、若干知識が必要だったりするかもで、意味取り違えていたら大変申し訳ございません(;´Д`)
なんでプロサイクリストのコーチなの?

まずは一番気になるのが、サンミラン博士はがん研究者なの? それとも自転車コーチなの!? というところ。端的に申しますと、サンミラン博士のバックボーンは研究者。じゃぁ、なんでロードバイクのプロと関わっているかというと、「プロサイクリストが『完璧』な身体を持っているから」だそう。曰く、
[意訳](がんや糖尿病による)不完全な状態を知るには『完璧』な状態を知らないといけない。その点、世界の頂点に立つプロサイクリストは地球上で最も『完璧』な肉体を持っていて、代謝がどのように行われているか、あるいは細胞レベルでどんなレギュレーション(制御・調節)が起こっているかを知る手がかりを与えてくれる。
This Scientist Believes Pro Cyclists Could Hold The Key To Curing Cancer
実際に博士がどうやってチームUAEやポガチャルに関わるようになったかについては語られていません。もともと、がん研究(代謝の研究)の一環でエリート選手と関わることを長年やってきた蓄積で人脈が広がっていったのかもかも(推測)??
ゾーン2トレーニングとがんの研究に何の関係が!?
続いてのサンミラン博士の不思議な接点は、ゾーン2トレーニングとがんに何の関係があるの!? というところ。これがまぁとても面白くて、この動画の味噌であり肝でありましょう。前述のとおり、キーワードは「乳酸」です。
がん細胞はグルコース(ブドウ糖)を使って乳酸をたくさん作ります
動画の中で、博士はのっけから答えのような極大ヒントを提供してくれています。曰く、「がん細胞はグルコースを使って大量の乳酸をつくる特徴がある」ですと。
このがん細胞の特徴は約100年前、ドイツ人のオットー・ワールブルクによって発見されたもの。ワールブルクは細胞(特にがん細胞)の呼吸の研究を行い、1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
遺伝から代謝にシフトしつつあるがん研究
はい、という訳で早速に出てきました、キーワードの乳酸! でも、がんって遺伝で、DNAを何とかするのが治療法として期待されているんじゃなかったっけ!?
しかしながら、「がんは遺伝」とは、ワタクシ(たち)に素朴に刷り込まれた固定観念。サンミラン博士によると、「遺伝子によるがん治療は期待されたような効果を何1つあげることができなかった」そう。
その代わりに、100年の時を経て台頭してきたのが前述のワールブルグが提唱した「ワールブルク効果」(⇒ワールブルク効果の意味)、すなわち代謝経路の研究なんですと。
ワールブルグの研究はDNAの発見以降、すっかり過去のもので忘れ去られていたそう。しかし、DNAが期待した成果をあげなかったことで今になって注目が集まり、過去10年でワールブルグの論文は3,000%もの伸び率で引用されるようになったのだそうな。
ひぇ~、凄い凄い、面白い(≧∇≦)! 学問の勃興と隆盛、没落、世代交代、(組み立て直して)再発見のやり取りはホント楽しいわぁ(*´ω`*)
乳酸の代謝経路を何とかしてみてはどうだろう!?

ワールブルクはがん細胞とグルコース(糖)の関係を見出しましたが、特に乳酸に関心を持ったそう。乳酸と言えば、そうです、僕たちが毎日毎日ロードバイクで溜めまくっているアレですよ(゚∀゚)!
サンミラン博士によると、乳酸は細胞の健康とホメオスタシス(恒常性)、ミトコンドリアを含む細胞レベルでの機能改善に対し重要な役割を果たすシグナリング分子であります。そして、運動すると乳酸は勝手に作られ、運動をやめると乳酸の生成は止まります。
しかし、がん細胞の場合、乳酸がなくなることはありません(と博士が言ってる)。がん細胞に乳酸が溜まり続けると細胞に有害な影響を及ぼし、「carcinogenesis(発がん現象)」につながるのだそう。
だから、(がん研究者である)サンミラン博士は乳酸をターゲットにしており、乳酸をどのように素早く上手に除去できるかという観点でトップ中のトップ・プロサイクリストに処方するような「ゾーン2トレーニング」に行き着いたのでありましょう。
「・・・ありましょう」という、何となく語尾を濁した書き方になっているのは、「なぜゾーン2トレーニングに行き着いたのか」について、博士ハッキリ述べてないから。ワタクシの独断と偏見と少ない知識と足りない脳ミソで、文脈を勝手につなげた可能性がありますので、もし誤訳、読み違い等ありましたら、大変申し訳ございません(;´Д`)
ちなみに、動画ではさらにもっと奥深く、現在の研究段階や今後の可能性について大いに語られています(ロードバイクの話題はまったく出てきません)。もし興味がありましたら、ぜひぜひ動画本編をご覧あれ。GCN、今回も素晴らしい動画をありがとう!!
以上、がん研究とツールドフランスの王者に何の関係が!? ポガチャルのコーチ、イニーゴ・サンミラン博士が語る「プロサイクリストが握るがん治療の可能性」についてのお話でした! 博士のインタビュー、GCNに限らず、今までいろいろなところで見てきた中で、今回はこれまた特別に面白いものでした。乳酸って、なんか途轍もなく大事な物質だったのねぇ。。。(・_・;)
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