クランクが割れる現象に対して、「無償点検プログラム」という、何とも中途半端な対応をしようとしていたシマノに対し、やっぱりアメリカで集団訴訟が起こってしまいました。訴訟場所はカリフォルニア地方裁判所で、原告はJose Erazo、Kevin Litam、Maurice Scorsolini、Marcus Lewisの4人を代表とするシマノユーザー、被告は北米シマノとスペシャライズド(んん??)、トレック(んんん??)であります。集団訴訟の内容を、ざっくり見てまいりましょう!
シマノ、アメリカで遂に集団訴訟へ
情報源はRoad CCやBike Radarなどの海外英語系メディア。ご丁寧にも告訴状へのリンクが貼ってあって、なるほどとても勉強になります。
消費者を犠牲にして修理費用を抑えようとしている
シマノクランクの無償点検プログラムおよびその経緯は当ブログ(⇒参考記事)やニュース媒体でも広く取り上げられており、すでにご存じの方も多いかと。ただ、「点検」という、なんだか煮え切らない(納得いかない?)対応に首を傾げた人は多いかもしれません。
日本人は首を傾げるだけで温厚というか人が良いかというか・・・でありますが、訴訟大好きなかの国はやっぱり訴えてきましたな。
ユーザーを代表して4人が原告となる集団訴訟で、「すべてのクランクセットを交換しないリコールは不十分」として、シマノを提訴したようです。
Even though Shimano has finally acknowledged the widespread issue, it is working hard to limit the cost of fixing the issue at the expense of consumers.
[抄訳]広く知れ渡っていた(クランクセットの)問題をシマノはようやく認めたが、それでもなお消費者を犠牲にして問題解決の費用を抑えようとしている。
Erazo et al. v. Shimano North America Bicycle inc. et al.
自転車屋(のメカニック)さんが責任を負うのかい??
問題があったクランクだけ交換するという対応に、全米が泣いたのでありましょう。そもそも、クランクが割れているか、もしくは今後割れる可能性があるか、誰がどうやって見極めるんだい?? えぇ、自転車屋に丸投げなの、その作業?? しかも目視??
自転車屋さんに責任を押し付けてはいないか?
クランク点検の在り方について、アメリカの集団訴訟でも問題提起がされています。曰く、
Second, Shimano touts the Defective Cranksets as sophisticated pieces of performance engineering, but, to save money during the recall, is deferring to local bike shops to make an important engineering determination – whether any particular Defective Crankset shows “signs of bonding separation or delamination” – that is critical to rider safety.
[抄訳]第二に、シマノは(欠陥があるにも関わらず)自社のクランクを、洗練され、優れたエンジニアリングによるものだと宣伝しているが、リコール中の費用を抑えるために、サイクリストの安全に重要なクランクセットが「割れる兆候」または「剥離」があるかの技術的な判断をバイクショップに委ねようとしている。
Erazo et al. v. Shimano North America Bicycle inc. et al.
告訴状はさらに続き、「自転車屋のメカニックはエンジニアではなく、安全に関わる技術的判断をする役割を負わされるべきではない」とか、「そのような技術的判断を、ストレステストではなく、目視だけで行うよう依頼されている」といった内容が綴られています。
そして、「交換が(シマノに)拒否されたクランクが、その後に壊れ、サイクリストがケガをした場合、メカニックが責任を取らされる」可能性についても言及しています。
集団訴訟で求められていること
訴状をざっと読むと、まぁ、(ユーザー目線で見ると)ごもっともなことばかり。原告は陪審員裁判を行うよう求めていまして、あぁぁ、これは・・・
どうなるクランク無償点検プログラムの行方
集団訴訟で原告が何を求めているのか、Bike Radarの抜粋を載せますと、以下のとおり。
Class-action lawsuit filed against Shimano, Specialized and Trek over Hollowtech crank failures
- “A declaration that the Defective Cranksets are defective”
- An award to plaintiffs of “of compensatory, exemplary, and punitive remedies and damages and statutory penalties, including interest, in an amount to be proven at trial”
- A “Defendent-funded program” to reimburse “out-of-pocket and loss-of-use expenses and damages claims associated with the Defective Cranksets”
[抄訳]- クランクセットに欠陥があると宣言すること
- 裁判で決定される金額にもとづき、利息を含む補償的、懲罰的損害賠償を原告に与えること
- 被告(シマノ)が資金を提供し、欠陥クランクセットに関連した個人の出費および使用不能による費用および損害賠償を原告に支払うこと
なぜスペシャとトレックまで訴えられてますの?
アメリカの裁判の行方はヨーロッパには確実に影響を及ぼすはず。それを受けて、日本がどうなるか・・・は分かりませんが、まだまだ「無償点検プログラム」の行方は未知数です。
スペシャとトレックは何かしたのかい?
んで、この訴状で気になるのが、おそらく皆さんも「んんん??」と思ったと思うのですが、シマノだけでなくスペシャとトレックまで訴えられていること。
訴状を読むと、「CLRA(カリフォルニア州消費者法的救済措置法)」や「CFA(イリノイ州消費者詐欺および欺瞞的商行為防止法)」などの各州の消費者保護法に違反しているからだそう。クランクセットに欠陥があることを知りつつ、それをきちんと伝えなかったりしたから被告に入れられてしまったんだと。
ここら辺、スペシャとトレックは辛うじて言い逃れできそうな気がしないでもないですが、はてさて。というか、シマノのクランクセット使ってるの、スペシャとトレックだけじゃないでしょう。キャニオンとか他のメーカーとかはどうするのかしら??
という訳で、シマノのクランクセット騒動、本番は実はこれからだ! 訴訟大国アメリカで、シマノ、遂に集団訴訟で訴えられる(◎_◎;)!なお話でした。シマノほどの体力があるなら、全交換してしまったほうが将来的にも安くつくと思うんだけどなぁ。。。少なくともショップに点検を丸投げしているように見られているのは、シマノにとって非常に痛手でありますなぁ(;´Д`)
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